戒厳令下のフルオさん

- 続 FOOL ON THE WEB -

GLP 昭島プロジェクトについて考える

今日(8/18)、GLP昭島プロジェクトに関する事業者説明会に行ってきた。このプロジェクトは、玉川上水に隣接した貴重な自然が残された代官山(昭島市の代官山です。あの代官山ではありません。)周辺に広がるゴルフ場を廃止し、物流施設及びデータセンターを建設するもの。

 

このプロジェクトは問題がかなりあり、住民の関心も高い。今回の説明会にも200人以上の市民が集まったのではないだろうか?元環境アセス技術者の立場として言うと、これだけの反対派住民がいるとかなりやりにくいな、と言う印象。もちろん全ての人の意見が反対ではないだろうけど。あと、やりにくいとは言ったけれど、僕もこのプロジェクトには反対の立場。今はもう現環境アセス技術者ではないからね。スタンスとしては「やたらと環境アセスにうるさい厄介なオッサン」を目指している。

 

で今回の説明会、以前の計画から結構変更があった。事業者が目玉だと思っているであろう計画変更点は、自然の残る代官山を囲うように配置された物流棟とデータセンターを集約し、代官山の北側に緑地広場を作り、玉川上水と代官山を繋ごうというもの。

今回の説明会ではその計画変更を、さも有用なことのように喧伝していた。

 

でも今回集まった住民の主な関心は交通計画。説明後の質疑でも交通量増加による渋滞と安全に関する質問が多かった。

そういった質問に対して、事業者側、解答担当は交通コンサルタントだったけれど、しきりに「分散」と言う言葉を使って影響を軽減させるような話をしていた。でも、これははっきり言ってコンセプトが間違っていると思う。理由と問題点はあとで述べる。

 

書き散らかしなので話は前後してしまうけれど、緑に関しても、緑地を作ることに実質的な意味があるようには思えなかった。で、緑に関してはあまりに新設の緑地のメリットばかり話すので、住民側は少しはぐらかされてしまったかもしれない。質問が少なかったのはそのせいかも。でもこの緑に関する計画もコンセプト倒れのような気がして仕方がない。僕は生活系のアセス担当だったので、自然系は門前の小僧なんとやらだけれど、一般の人よりは多くの情報に接しているつもり。

 

で、つらつらと書いていてもわかりにくいと思うので、計画でおかしいなと思ったところや今回議論が詰め切れなかったなと思う点を箇条書きにしてみたいと思う。

説明会の要約や質疑の詳細については、他のグループの人がもっと上手に報告してくれると思うのでそれを見てください。僕のこの文章は明日(もう今日か)の説明会の予習や参考になれば嬉しいです。

 

【緑について】

1.事業者はしきりに「緑の利用」ばかり説明していたけれど、この考えって古くないだろうか?アセスの評価項目として、自然系(動植物・生態系)に加えて『人と自然との触れ合い活動の場』という項目が追加されて約20年経つかと思うけれど、もう20年経っているし、はっきり言って項目として盛り上がってない。

 

2.1に加えて、現在は緑に関する住民の関心は、利用よりも保全や存在自体に関心が移ってきている。これは利用する自然から保全する自然へ、再び関心が戻ったというべきなんだけれど。神宮外苑の例を見ても、住民の関心が利用よりも保全にあることは間違いないと思う。

 

3.今重要視されている『生物多様性』も人間による適切な干渉が重要だとされている訳で、利用という単純な干渉では『生物多様性』は保全されない。

 

4.都市環境においては、利用者が制限されるゴルフ場であっても、生態系や景観の面から重要。利用が少ないからと言って簡単に潰していいものではない。最近は都市環境の中に残存する自然、たとえそれが人為的な自然であっても、その環境を利用して都市に戻ってくる野生動物が重要視されている。

 

5.ゴルフ場に囲まれた代官山の林地にはオオタカの生息が確認されている。オオタカは近頃個体数が増えて、アセスでは貴重種として扱われなくなりつつあるけれど、まさに「都市に戻ってきた野生動物」として重要だろう。ゴルフ場は餌場などの生息域になっていないだろうか?そして新設される中央公園はその役目を果たすのだろうか?

 

6.自然保護団体の調査では、同じく代官山にアナグマの生息が確認されているらしい。アナグマは実は希少な野生動物で、例えば千葉市緑区若葉区はかなりの自然が残されている)では1984年以降、公式には確認されておらず、絶滅種となっている。

https://www.city.chiba.jp/kankyo/kankyohozen/hozen/shizen/documents/redlist.pdf

 

7.玉川上水と代官山をつなぐ形で中央公園を作り、自然の回廊(コリドー)を作ることをコンセプトとしているようだが、芝生広場として誰もが利用できる土地が、果たしてコリドーとして機能するだろうか?むしろ現況のゴルフ場として利用が制限されていたことが、代官山の貴重な生態系を育んでいたのではないか?

 

8.そもそも計画されている中央公園と代官山の間には、事業者自ら運送車両を通す道路を新設する予定であり、運送車両は24時間通行すると説明されている。これでは陸上動物は夜行性の種でさえ代官山と中央公園間を行き来することはできない。

 

【交通計画について】

1.類似計画としてアルファリンク流山と相模原の例が出されていたが、立地条件が違いすぎる。流山は圏央道のインターまで直線距離で500m、相模原は上溝バイパスに隣接している。昭島の立地は16号まで1.8km、八王子インターまで5kmであり、交通状況は劣悪と言っていい。

 

2.さらに事業計画地は、南を青梅線、北を拝島線に挟まれており、さらに西側は青梅線八高線拝島線が集合しており、線路を越えずに域外に出ることはできない。このような土地が物流施設の設置に適切なのか、住民に説明が全くなされていない。

 

3.今回の説明会では昭島市立川市と協議をしていることは説明されたが、その他の鉄道事業者、警察、都の建設事務所との協議は進めているのだろうか?

 

4.交通計画、すなわち発生交通の処理については、頻繁に『分散化』という言葉が使われていたが、これはコンセプトとして正解なのか?分散化するということは、影響範囲が広がるということである。住民は道路が狭く渋滞が生じている地域にさらなる交通問題が拡大することを受容するだろうか?

 

5.発生交通の処理を『分散化』させることしか選択肢がない地域が、果たして物流施設の立地として適切なのであろうか?

 

6.『分散化』による影響範囲の拡大は、交通安全面で問題はないだろうか?環境面については「薄く広く」すればよいが、交通事故による不幸は「薄く」はならない。一件の交通事故が住民を深い悲しみに陥れてしまう。分散化は交通事故の可能性のある地域を「広く」するだけではないのか?

 

【全般】

1.今回の説明会では、事業の実施と新しい環境対策の『メリット』ばかりが説明されたが、『デメリット』についてはどうなのか?そもそも、環境負荷を評価し軽減するためには、デメリットを把握し、その軽減について検討すべきである。

 

2.今回発表された中央公園については、現存の緑地を残すというのが実際のところである。また、その方法は施設の効率化、集約化によるものであり、事業を縮小することによるものではない。環境緩和(ミティゲーション)の三段階である『回避』『低減』『代償』のうち、最も初歩である『回避』である。これだけ住民の関心が高い環境改変において、初歩の段階だけの対応で良いのか?『低減→事業の縮小』『代償→代替となる自然の創出』についても検討すべきではないか?

 

3.説明会資料について、「複製及び利用にあたっては当社の許諾を必要とします」とあるが、これは住民による周知や集会などでの報告・議論を制限するものではないか?

 

以上、長々と書き連ねてしまいましたが、なんらかの参考になれば幸いです。明日の説明会に間に合うでしょうか?

なお、参考にしていただくにあたって、特に僕に報告や許可を得る必要はありません。引用元の表記もいりません。皆さん自由に使ってください。コピペしてどんどん使ってください。

僕の叔父が「コピーライトはもう古い」と言っているので、それを真似することにします。

 

あ、もちろん参考になれば、ですけれど……

 

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※肝心のTwitterアカウントを書き忘れてました。

@foolontheweb

です。こういうところ、抜作さんだねぇ。