戒厳令下のフルオさん

- 続 FOOL ON THE WEB -

PCR検査って?

今日は6時ごろに目が覚め、二度寝せずに起きていました。会社を辞めてストレスフリーになったものの、調子の波はまだまだあるようで、一昨日までは家でほとんど寝て過ごしている状態でした。昨日は比較的気分が良く、日記も再開したので、やや躁の状態に入っているような気もします。あまり気分の変動がないようにしたいのですが、なかなかうまくいきません。また鬱の波にはいってしまったら、この日記も中断ということになってしまうかもしれません。

 

先月の中頃から、アフガニスタンの水路建設に身を投じ、昨年の12月に亡くなった中村哲医師の著書、『天、共に在り―アフガニスタン三十年の闘い』(NHK出版)を読んでいます。追悼番組として再放送されたNHKの番組が読むきっかけとなりました。中村医師のアフガニスタンにかける想い、水路建設の困難さが、水路の建設の進展にあわせて綴られる形となっており、水路建設のクライマックスはまるで冒険小説を読んでいるかのように胸躍ります。

 

話は前後しますが、午前中は頭の体操をしていました。新型コロナウイルス感染症に関する議論の一つである、『PCR検査数は増やしたほうがいいのか否か』という問題についてです。「PCR検査数は絞ったほうがいい」という主張において、検査数の増大による医療崩壊とともに語られるのが、PCR検査数を増やした時の検査精度です。「検査を増やすな」という人は、ベイズ推定を用いて1枚目の写真のように説明します。つまり、A:陽性的中率、B:偽陰性率、C:偽陽性率、D:陰性的中率、E:感染者の割合、D:非感染者の割合で試算すると、PCR検査が陽性だった場合に本当に感染している確率はとても低い、と。

 

本当にそうなのでしょうか? 実際に計算してみましょう。写真中の数値は、現在わかっている一般的な数値を入れてあります。計算といっても、この場合の計算は単純な四則演算です。いま、PCR検査制限派のいう【ある人がPCR検査を受けて陽性だった場合、実際にその人が感染している確率は?】を計算してみると、感染している確率は、[①の四角形と③の四角形の面積の合計]に占める[①の四角形の面積]の割合で計算されます。計算してみると約0.2%となります。ある人がPCRで検査して陽性だったのに、実際に感染している確率は0.2%と聞くと、かなり低い。PCR検査数を増やすのは意味がないのではと思ってしまいます。

 

しかしこれはミスリードです。PCR検査制限派は、ベイズ推定においてEとFの確率を感染者数と非感染者数の割合としていますが、実際の診断検査では全く異なる数値が使われます。診断検査で使われるEとFの数値は、『PCR検査を受ける前の段階で得られる感染/非感染の可能性』です。実際、PCR検査を行う前には問診や所見等によって必ず診察するでしょうし、全国民(感染者と非感染者の合計)を検査するのも非科学的です。日本に比べ検査数が非常に多い国でも、全国民を検査した国は世界のどこにもありません。

 

では、EとFの数値を、『PCR検査を受ける前の段階で得られる感染/非感染の可能性』として試算してみます。写真2では仮に、問診(濃厚接触の可能性等)や所見(熱、咳などの症状)で、『この人は病原体に感染している可能性が20%ある』としています。Eは20%、Fは80%となります。計算自体は先ほどと同様に、[①の四角形と③の四角形の面積の合計]に占める[①の四角形の面積]の割合で計算されます。実際に計算してみると、約94.6%となります。つまり、『20%の可能性で感染が疑われる人をPCR検査した結果陽性だったとき、実際に感染している可能性は94.6%』ということです。これなら検査の意味が十分にあります。ではPCR検査推進派は、どうやって検査数を増やしたほうがいいと言っているのでしょうか? それは、「PCR検査の精度(この場合94.6%)があまり下がらないようにしつつ、感染が疑われる人のハードル(この場合20%)を下げましょう」と言っているわけです。

 

僕自身、PCR検査を増やせ/増やすなの論争を、その内容もわからず眺めていましたが、実際に計算してみると、自分がどちらの主張を支持すべきか、明確にわかったような気がします。

(実際の臨床現場では、もっと高度な統計理論に基づいた確定診断が行われています)

 

参考:「ベイズ統計の応用領域としての診断検査」Jpn Pharmacol Ther vol.47 No.8 2019

http://www.med.u-toyama.ac.jp/biostat/Diagnostic%20tests(JPT,%202019Aug).pdf

 

 

2020年4月10日 16:35 駅前の喫茶店にて

 

写真1

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写真2

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